ねずみのすもう

精神科医のねずみ

2020-01-01から1年間の記事一覧

中島みゆき考その1 「アザミ嬢のララバイ」

ツイッターでたびたび中島みゆき(1952~)に言及しているが、つい5年前まで彼女の作品はよく知らなかった。 野太い声で歌うなんか怖い人という先入観があったし(失礼)、たまにファンだと公言するひとに出会うと妙にめんどくさい人だったりした。いまや自分が…

ダメ男考

「アタシ男運悪くて。。」 という恋愛相談めいたものを受けることが時々ある。ツイッターでは二言目には嫌味を言うウザいねずみキャラになっているが、リアルでのわたしは気さくで人の話をよく聴くのである。 正直アラサー以上になって男運が悪い、と言われ…

不幸の中の幸福

「不幸になりたがる人たち」 わたしの私淑する精神科医・春日武彦(1951~)先生の著作のひとつである。 1年ほど前のエントリーでも書いた気がするが、人間というものが口では幸せを望みながら、「ひそかな自滅志向」に酔いながら生きているのではないか、とい…

溺死しかけたこと

小学校2年生くらいのとき、プールで溺れたことがある。 夏の日のことである。 小学生にとって、プールというのは祝祭的な楽しみだった。わたしの通っていた公立小学校では、練達度を階級で表すようになっていて、なにかの目標をクリアするたびに水泳帽に達成…

パワハラ考

最近、職場でのパワハラで抑うつになり当科を受診する患者さんがとても多い。といっても、現場を見ていないのでパワハラと断定するのは難しく、パワハラの定義とは...という込み入った議論には迂闊に入り込めない。厳密にいえば労基署などの管轄になるのかも…

ヒットの法則

鬼滅の刃が大ヒットである。この作品、ファンの方には大怒られが発生しそうなのだが、まだ5巻くらいまでしか読んでいない。ちょっと前に銭湯行ったときに休憩ルームに置いてあったのを読んだまでである。読み始めて、まず「大正時代というが大正何年なのだろ…

人文学に関する雑感

以前のエントリーにも書いた気がするが、もともと英語と日本史・世界史など文系科目が得意だった。人間のタイプとしても、エヴィデンス主義の現代の医者というより人文学者寄りだと思う。医学部に進んでも、「なんでお前、文系に行かなかったんだ?」と訝し…

「教養」についての雑感

現代ほど「教養」という言葉がときに称揚され、時にpgrされている時代はないのではないか。 ときは明治大正・旧制高校のエリート教育華やかなりし頃、「教養」はステイタスであった。学生は古今東西の著書を読み漁り、ちょっとイイ感じになった婦女子を「Mäd…

オイディプス王

精神科医がネット上で期待されている役割のひとつは、ホロっとくるような「落としどころ」のある、自己啓発的な話をすることだろうと思う。 しかし、この手の話は語り手がある程度美男美女でないと説得力がなくなったり胡散臭くなってしまうきらいがある。あ…

ツイッター考

早いものでツイッターを初めて2年余りが過ぎた。 当初のツイートを見てみると、新人特有の生真面目さと鯱張った様子、つぶやいても何の反応もない虚しさ、なんとかフォロワーを増やそうとしていた様子がうかがえてほほえましい。ここいらで自らの2年余りのツ…

医者はおっぱいとツイートしてはいけないのか問題

結論から言うとよくないと思う。明らかに怒る人が一定数いる以上、あえてやる意味は乏しいからである。 しかし、そんなことは分かっているにも関わらず、なぜ、おっぱいとツイートする医者が(下手をすると女性の中でも)それなりにいるのか。 まずは、乳房に…

ナウシカ考

映画館でジブリ作品が上映されているというので、さっそく「風の谷のナウシカ」を観てきた。考えてみたらジブリの作品を映画館で観たことなかったな...。 ナウシカはこれまで何度も観た。上映当時(1984年)、わたしはまだ生まれてすらいなかったが、その後繰…

「異域の人」

自分は残りの生涯でどれくらいのことを成し遂げられるのだろう、とか考えてしまう。 医者のはしくれをやっていて、家庭も持って30半ばのいい大人である。このポジションを維持するだけでも大変なことであり、それ以上を望むのはおこがましいというべきかもし…

引っかかる出来事

高校3年になる春先のことだった。 当時通っていた大学受験塾のフロアで中年らしき女性に呼び止められ、講師室はどこ?と訊かれた。 建物の内部について訊かれるといささか面食らう。階段がいくつかあるが、最短経路はどう説明したものか。あと講師室は複数あ…

老けたネズミについて

年の割に老けたことを言う、と小学生のころくらいから言われ続けていた。 声変りがはじまった中学生の頃には、家で電話をとると、話しぶりが妙に大人びているので父とよく間違えられたり、医者になってからもほかの病院の先生と電話でやりとりするとき「50歳…

「和解」

子供のころ、妖怪だの幽霊だのの話が好きで、図書館からその手の本を借りてよく読みふけっていた。 今思い出してもよくできていると感心するのが、小泉八雲(1850~1904 ラフカディオ・ハーン)の「怪談」である。 ハーンは明治時代の日本に帰化した「お雇い外…

春なのに

コロナである。本来なら花見の人だかりができているはずのこの頃、川の土手の桜並木は閑散としている。私は昨年末、何の気なしにこんなツイートを放ったが、まさか数か月後に世界レベルでウィルスによる大混乱が起きようとは予想していなかった。 おそらく俺…

コロナ禍

私は飲み込みの悪い、不注意な子供だった。幼稚園でも、小学校でも、先生が「○○しましょうね~」というと、みんなテキパキと指示に従って準備なり作業なりを始めるのだが、私一人説明を聞き逃していてオロオロ、という場面がけっこうあった。図工の「明日の持…

たそがれ清兵衛

以前の記事「春日武彦先生のこと」で、精神科医・春日武彦の本との出会いについて書いた。医大入試の前期試験が終わって発表を待つ、微妙な「凪」ともいうべき時期に出会った本だったが、もう一つこの時期に出会った印象深い映画がある。テレビ地上波で初放…